名古屋地方裁判所 昭和39年(ワ)2759号 判決
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〔判決理由〕<証拠>を総合すれば、鉄三郎は原告利治と共同して刺しゆう加工業を営み、鉄三郎は婚礼衣裳の、原告利治は婦人服の各刺しゆうを主として担当し、その年間収益に占める割合はおよそ四対六位であること、右両名は税務署に対する申告では鉄三郎を営業主、原告利治及びその妻を事業専従者として取扱い、昭和三十八年中の鉄三郎の刺しゆう事業による申告所得額は六十一万五千二百八十円、原告利治及びその妻の事業専従者控除は法定限度一杯となつていることが明らかである。この申告が青色申告によつたと認められる証拠がないから、所得税法第十一条の二第三項及び昭和三十八年法律第六十六号第四条により事業専従者控除は二名合計十四万七千五百円となる。従つてその合計額七十六万二千七百八十円が両名の事業所得であり、うち鉄三郎の所得は前示の事情にかんがみ三十万五千円と認められる。
右は税法上の事業所得であつて収入を得るための必要経費はすべて控除されていること、同人が七十二才の老人であつたこと、<証拠>によつて認めうる同人の申告所得額は前示事業所得をふくめ七十八万余円であることに徴し、同人の生活費は年間八万五千円と推認できる。
しからば鉄三郎の得べかりし利益は年間二十二万円となる。昭和三十八年簡易生命表によれば七十二才の男子の平均余命は八・二一年であるが、刺しゆう業がとくに眼を酷使することにかんがみ、鉄三郎が前示のように健康体であつても、その就労可能年数は四年と推認するをもつて相当とする。
鉄三郎が右期間内に取得すべき利益からホフマン式により年五分の中間利息を控除して事故時の現価を算定すると(ホフマン係数三・五六四三七)七十八万四千百六十一円となる。原告花尾は鉄三郎の妻でありその余の原告らは鉄三郎の子であることは争がないから、原告花尾の相続分は三分の一その余の原告らのそれは九分の一である。従つて右喪失利益中原告花尾の承継したものは二十六万千三百八十七円その余の原告らの承継したものは八万七千百二十九円となる。(沖野威)